授業科目名: 専門セミナー 副題: 技術進歩の経済学 副題の英文: Technology and knowledge in economic development 担当教官名: 堀井 亮 職名: 経済学研究科講師 単位数: 2単位 開講学期: 2学期 授業目的:  今日の感覚では経済は成長するのが当たり前であり、バブル崩壊以降のよう にゼロ成長となることは異常事態と考えるのが普通だと思います。しかし、経 済が持続的に成長するようになったのは歴史的に言うと比較的最近のことです。 実際18世紀までの世界の一人あたりGDP成長率はせいぜい0〜0.3パーセント ほどでしかなく、新世界の発見や活版印刷等の技術的転換はあったにせよ、そ れらは持続的成長に繋がりませんでした。では、なぜ19世紀以降経済は成長で きるようになったのでしょうか? この授業では知識蓄積と技術進歩のメカニ ズムを多くの歴史的実例を通じて学習します。また、これらを通じて英文の文 献を読む・レジュメを作成する・多人数の前で報告するスキルを身につけるこ とを目標とします。 授業内容:  経済成長の要因としては、学部向けの一般的なテキストでは資本蓄積や教育 年数の上昇(人的資本の蓄積)を成長の源泉として扱いますが、最近の研究ではそ れらの要因では持続的な経済成長を説明できないことが解ってきています。残 る可能性は技術の進歩、つまり技術的知識の蓄積です。本授業ではMokyrのテ キストを用いて漠然とした「技術的知識」という概念を2種類に分類し、その 相互依存関係が長期の経済成長を可能にしていくプロセスを学習します。授業 では特に以下のような疑問に注目します: ・ なぜ持続的な知識の蓄積・技術の進歩・経済成長は19世紀まで始まらなか ったのか? それ以降なぜ持続しているのか? ・ なぜ持続的成長はは世界の他の場所でなくヨーロッパで始まったのか? (そ れまではむしろアジアの方が先進国だった) ・ 技術的知識の広がりは働き方や家庭のあり方をどう変えるのか? ・ 技術の変化に対して抵抗する勢力はないのか? また、各国の制度は技術の 進歩に対してどのような影響を持つのか?  授業はテキストを参加者が順番に報告する形式ですすめます。各章の長さに より数人で分担することになります。テキストは一般の読者向きに数式を用い ずに書かれていますが、報告者はテキストを十分に読みこなし様々な概念や事 例を参加者にわかりやすく説明することが要求されます。 教科書: Mokyr, Joel "The gifts of Athena: historical origins of the knowledge economy," Princeton University Press, 2002. ISBN: 0691120137 (安価なペーパーバック版が2000〜3000円程度であります) 成績評価: 平常点(資料の準備・報告・議論への参加等) コメント: 初回に担当を決めるため、初回授業を欠席した学生は履修不可能 となるので注意してください。また、参加希望者は事前に教科書を購入してお くこと(オンライン書店等、納期が明確なところでの購入が望ましい)。